SOLOLAはナイジェリアのヨルバ族伝統の藍染め布アディレ•エレコを生産しています。
日本帰国後、アディレ布についてご説明する機会があるのですが、なかなか上手くお伝えできていないなぁと思い、ブログでそのことに触れようと思います。

アディレ•エレコは今からおよそ100年前に生まれました。
この話をするとエレコを「わりと若い布」と思われるかもしれませんが、初期のアディレは12世紀頃に作られていたとされ、とても長い歴史を持つ染物なのです。
くわしくは「アディレ今昔記」の記事をご覧下さい。
ヨルバ族の藍染も同じく古くから続くものです。今では、化学染料をたくさん加えた形だけの藍染めはいくつかあるものの、昔ながらの本物の藍染めはほとんど姿を消しました。SOLOLAの布を染めてくれるのは、産地で唯一の伝統的な染めを続ける染め手です。彼女の主な仕事は、わずかな藍染めとたまに入るジーンズの染め直しだけです。
植民地化、独立、内戦、軍事政権下、そして今、ナイジェリアの辿った歴史に翻弄されながらアディレは現代へとつながり、その長い道がいま途絶えようとしています。

また、なぜエレコなんですか?とご質問を頂くこともあります。
その答えは、単純にただ美しいと思ったからです。
最初に知ったのは、海外のアフリカ染織の本に載っていた古い高品質なエレコの写真を見たときでした。
アフリカの染織といえば、繊細な手仕事の得意なアジアに比べておおらかだったりおおざっぱだったり、独特の感性を持つ天才肌、というイメージでした。
しかし、本に載っている布(エレコ)は、そんな固定観念を覆すものでした。布は精緻な模様でびっしり埋め尽くされ、碁盤の目状に並べられた柄は吸い込まれるような宇宙観がありました。そして、どこかユーモラス。その珍しさ、不思議な魅力にひかれました。
しかし、現地ではそのような古くて美しいアディレはどこにも見当たらず、輸入本やとくに染織などの専門書も売っていないので、正直、本当にあるのか信じられませんでした。
3年ほど産地に通う今でも片手で数えるほどしか見た事がなく、これほどまで現地にないことに驚きました。
一方、欧米や日本に行くと、昔の名品のアディレを意外と見る事ができます。欧米や日本の美術館、博物館、ギャラリー、収集家、テキスタイルショップなどは素晴らしい布を所有しています。また、国内外で出版されたアディレの載った染織本もインターネットで取り寄せることができます。

現地から布が姿を消した理由は、一時期たくさんの高品質な昔のアディレが外国人によって国外に持ち出され、その後、現地では時代とともにアディレの衰退に拍車がかかり、廃業や後継者不足により生産者が減った事によって高品質の新しいエレコが作れなくなったからです。その結果、産地には良い布がなくなってしまったのです。
アディレを作る生産者ですら、そのような良い布に触れる機会はなく、実際見た事がない人がほとんどです。
私はナイジェリア国外で美しいアディレを前にすると、わーすごい!柄細かい!きれい!!と興奮する一方で、「このアディレを生産者さんやヨルバの人たちに見せてあげたいなぁ」と複雑な思いになるのです。
きっと、自分たちの文化がこんなに美しい布を生み出していたと知ったら、アディレや自分たちの文化をもっと誇りに思うはずです。
SOLOLAはいま日本や海外に向けて発信•販売をしていますが、SOLOLAの思うほんとうの伝統の継承とは、輸出商品としての成功だけではなく、その文化を持つ人が自分の意志でそれを大切に思い、実際に使うことだと思います。

それにはまず、いいものを作ることから。
現地の人も見とれてしまうような布ができるよう、生産者さんと一緒に頑張ります!